Limestone
Dolomite
Magnesium Hydroxide
Ferro Silicon Nitride
Fused Silicon
Non Asbsetos Fiber
Others





ドロマイト

ドロマイトは、岐阜県山県市(旧美山町地内)の美山鉱山で採掘しています。

国内のドロマイトとしては、高マグネシウム分を含むものです。

主たる製品は、つぎのようなものがあります。

鉄鋼向け(原石及び焼成用原石)

板硝子メーカー向け原料

苦土肥料(粉肥料、造粒肥料、混合肥料)

美山鉱山衛星写真


美山鉱山航空写真


採掘切羽


採掘切羽


採掘切羽


美山町岩佐地区(鉱山より20Km)には、鉱山付属の硝子原料と肥料製造工場があります。

また、その品質は、蛍光X線等の分析機器により管理されています。

岩佐工場


      

 

ドロマイト新規アプリケーション

ドロマイトには、下記の分野での利用が考えられております。
これらは、海外では実績もあり利用されている分野でもあります。

ドロマイトの新規分野へのアプリケーション

1.水処理
2.酸性河川水の中和処理方法への利用。
3.湖沼等の底質浄化への利用
4.地球温暖化対策への利用
5.水処理関連調査結果
6.耐水性モルタル
7.凍結防止剤(CMA)
8.流動層用脱硫資材
9.今後の調査対象

 国内におけるドロマイトの利用領域は、元来鉄鋼・硝子・肥料・窯業・砕石等の分野に限られており、石灰石におけるような多様な分野に利用されていないのが現状です。
 フィラー等の石灰石が秀でている分野では、ドロマイトは粉砕性・白色度等から石灰石に対して不利であり、Mg分含有物であるドロマイトとしての特殊性が発揮できる新分野の開拓が望まれています。

1.海外で利用されているが、国内で利用されていない分野--水処理

 欧米では、ドロマイトを半焼成しCaCO3・MgOとしたものが飲料水・工業用水浄水設備で、使用されており、規格としても DIN EN 1017 で、取り決められ、長年にわたり使用されています。
 主たる用途は、pH調整・脱硫・脱鉄・脱マンガンで、商品としては、
Schoendorfer GmbH の Semidol
Rheinkalk  の Akdolit , Magno-dol
等があり、フィルターベット材として、用いられています。

参考資料
(1)Semidol Schoendorfer GmbH
  http://www.dolomitwerk.de/dolomit/deutsch/haupseiten/download.htm
半焼成ドロマイトのメーカーによる説明
(添付資料 1)

(2)Wasserversorugung Universitaet Essen Siedlungswirtschaft
http://www.siwi.uni-essen.de/German/Scripte/siwawi_2.pdf
  独エッセン大学の講義資料


2.従来は、消石灰等が多用されている酸性河川水の中和処理方法への利用。

 宇部マテリアル社の出願特許 特開2003−25371(添付資料2) においては、タンカルとドロマイト仮焼物の併用による酸性河川水の処理が提案されています。消石灰を使用した処理方法では、過剰な石灰ミルク投与分や中和生成物である石膏が白濁し、下流域のダムに滞留されることが問題となっています。 この特許によれば、「ドロマイト仮焼物は、単独で酸性水のpH調整剤として用いても、従来の方法より石膏の生成を低減できる。」とされています。
 また、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)の単独使用も提案されています。

 平成15年度第2回の関東地方整備局事業評価監視委員会の議事録によると、吾妻川における硫黄の中和処理が問題として提起されています。吾妻川の石灰ミルク投入設備と中和沈殿物体積場である品木ダムは、「死の川を救った。」とまで、評価されていましたが、現実は、その中和澱物がヘドロ状で、そのための堆積場の耐用年数が問題になってきています。

 議事録によると、「検討過程では色々な手法も考えており、今後もプラントという方法以外にも、例えば、水酸化ナトリウムを使えば沈殿物が出ず、発生する泥を出すということがなくなるなどの手法も比較している。」との話も出ています。水酸化マグネシウム(ブルーサイト)を用いても、沈殿物の発生はなくなることになります。

参考資料
(3)関東地方整備局事業評価監視委員会(平成15年第2回)事業概要
http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/region/jigyohyoka/pdf/8_gijiroku.pdf
(4)国土交通省関東地方整備局 品木ダム水質管理所
http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/index.html

3.湖沼等の底質浄化への利用。
 
 琵琶湖等の湖沼では、水質の悪化とそれに伴う嫌気性状態にある底質が問題となっています。生石灰などを投入することにより、pHを上昇させることはできますが、早期に流失し持続性が望めません。多孔質の天然素材で、pHを上昇させることができ、溶解せず、大量に使用されることから安価な素材が望まれています。
 ドロマイトは、脱リン効果もあり、このような用途に、pH調整剤として利用できる可能性がある。半焼性ドロマイト、多孔質ドロマイトを利用することは、消石灰のように溶解せず、効果を長時間持続させることができると期待できます。

4.これからが期待できる分野−地球温暖化対策への利用

 今後期待できる分野としては、バイオマス利用技術のネックとなっているタールの分解触媒としてのドロマイトの利用です。

4−1.地球温暖化対策において、バイオマスが注目されている理由。

  日本は、京都議定書の締結により、1990年の温室効果ガスの排出量に比べ6%の温室効果ガス抑制を2008年から2012年の第1約束期間に達成する義務が課されています。
  京都議定書では、化石燃料のみが計算対象であり、バイオマスについては、「カーボンニュートラル」という特性から、再生時に発生する炭酸ガスは計算から除外できるとされています。従って、化石資源由来のエネルギーや製品をバイオマスで代替することにより、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスのひとつである炭酸ガスの排出削減に大きく寄与することが可能となることになります。

  「カーボンニュートラル」:バイオマスを燃焼すること等により放出される炭酸ガスは、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した炭酸ガスであることから、バイオマスでは、大気中の炭酸ガスを増加させないという概念。

4−2. 日本政府のバイオマス重視策

 日本政府は地球温暖化推進大綱における新エネルギー導入目標のうち、バイオマス利用が約6割を占めており、これは、一時エネルギー総供給では、3%と少ないものではあるが、1999年実績に対して、約20倍の目標値となっています。

 初めて作成された 平された「エネルギー基本計画」においてもバイオマスの重要性が述べられています。また、平成14年12月27日には、「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されています。

政府としては、バイオマス発電等の新エネルギーを含めた分散型エネルギーシステムを構築し、将来は、バイオマス等の化石燃料に依存しないエネルギー源から、クリーンエネルギーとして注目されている水素の製造化を実用化することを目標としています。

参考資料
(5)エネルギー基本計画 平成15年10月エネルギー政策基本法の規定により国会に報告
http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004573
(6)バイオマス白書 新エネルギーとしてのバイオマス
http://www.jbnacla.net/bin/hakusyo2004/T-2-1.htm
(7)バイオマス・ニッポン総合戦略 平成14年12月27日 閣議決定
http://www.maff.go.jp/biomass/senryaku/senryaku.pdf
(8)森林バイオマスによるエネルギー供給と経済性 島根大学生物生産学部 小島
http://homepage.mac.com/hitou/satoyama/bn/014kozima.html


4−3.京都議定書とクリーン開発メカニズム(CDM)

 京都議定書では、京都メカニズムという概念が取り入れられています。京都メカニズムには、(1)排出権取引 (2)共同実施(JI) (3)クリーン開発メカニズム(CDM) の3種があり、(3)は、先進国が途上国において実施された温室効果ガスの排出削減事業から生じた削減分を獲得することを認める制度で、植林事業等が該当しますが、バイオマス原料資材の調達コストが安価な発展途上国では、バイオマス事業が実施されているところもあり、今後バイオマス事業が増えることと考えられています。(チェコ・ブラジル等)
 
 経済産業省においても、中央環境審議会地球環境部会の平成16年6月18日付け文書で、「国内温室効果ガス削減対策の0.5%目標が達成されたとしても、京都議定書の目標である6%約束については、森林シンクの3.9%を除いた1.6%分相当が不足する。」そのためには、「京都メカニズムCDM/JIが利用されるべきである。」としています。

参考資料
(9)京都メカニズムの概要
http://www.env.go.jp/earth/cop6/3-4.html
(10)クリーン開発メカニズムとは
http://www.oecc.or.jp/kaiho/no37/37p9.pdf

 また、経済産業省の発表資料には、
 「経済産業省では、平成16年度バイオマスエネルギー技術開発予算を72億円程度計上し、我が国のバイオマス資源の特性に着目した高効率かつ小規模なバイオマスエネルギー転換技術の実用化を目的とした技術開発を継続実施するとともに、本16年度からはエネルギー転換プロセスにおける前処理や残渣処理などを含めた周辺技術についての要素技術開発に着手している。」
 「我が国では、バイオマス資源が欧米諸国と比較し大規模に集積しないという特性があることから、小規模なバイオマスの供給量で高効率にエネルギー転換できる小型システムが必要とされている。例えば、木質バイオマスの場合、ガス化が有望視されており木質バイオマスのガス化に伴い発生するタール等の不純物の除去する技術分野等、我が国のバイオマスの実情に即した技術分野について、今後、重点的に支援を行う考えである。」
と記述されています。

参考資料
(11)中央環境審議会地球環境部会第17回会合関係省庁ヒヤリングにおける委員からの御質問に対する経済産業省回答 経済産業省 平成16年6月18日
http://www.env.go.jp/council/06earth/y060-20/ref_04_1.pdf


4−4.タールの分解とドロマイト

 前項でも、触れているように、バイオマス技術で問題とされているのが、発生するタールの分解・除去で、その問題が開発されない限り、バイオマスの有効利用とされているガス化実現は困難であると考えられております。このプロセスでは、ドロマイトをタール分解の触媒に用いるとよい結果が得られることが、数多くの文献で述べられており、既に定説となっています。しかし、国内においては、まだ海外ほど研究されていない状況です。

参考資料 邦文
(12)タール 北海道大学大学院 環境資源工学専攻環境保全システム工学講座 大気環境保全工学分野
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~r16736/tar.html
(13)発電分野における代替燃料 CADDET IEA OECD
http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/foreigninfo/html008/pdf/p037-107.pdf

参考資料 英文
(14)Catalytic cracking of tar in product gas from wood gasification, TPS Termiska Processer AB, Michael Morris, Sweden
http://www.gasnet.uk.net/files/126.pdf
(15)New Approach for Biomass Gasification to hydrogen, Aer-Gas
http://europa.eu.int/comm/research/energy/pdf/efchp_hydrogen10.pdf
(16)Biomass Gasfication technology forcast, Worldbank
http://www.worldbank.org/html/fpd/em/biomass/igcc_appendix.pdf
(17)Primary measure to reduce tar formation in fluidised-bed biomass gasifiers, Final report SDE project P1999-012
http://www.ecn.nl/docs/library/report/2004/c04014.pdf
(18)Progress in Biomass Gasfication:An Overview, Directorate General fo Energy & Transport, European Commission
http://europa.eu.int/comm/energy/res/sectors/doc/bioenergy/km_tyrol_tony.pdf
(19)Biomass Gasfier "Tars":Their Nature,Formation,and Conversion, National Renewable Energy Laboratory, Colorad, USA
http://www.gastechnology.org/webroot/downloads/en/IEA/
TomandNicolasreport.pdf
(20) A Review of the Literature on Catalytic Biomass Tar Destruction, Milestone Completion Report, D.Dayton National Renewable Energy Laboratory, Colorad, USA
http://www.nrel.gov/docs/fy03osti/32815.pdf
(21)Untersuchung der Teerbildung bei der Wirbelschichtvergasung von Biomasse, Projektkennblatt der Deutschen Bundesstiftung Umwelt (独文)
http://www.cleaner-production.de/wwwcpg/htmlneu/view.php?obj=23285

 平成15年9月1日開催のNEDO技術評価委員会第2回「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」評価分科会の議事によると委員から、低温流動層ガス化技術において、
(1)流動層の大きな特徴である媒体粒子に、本技術開発で問題となる「低温でのタール捕集・分解機能」を付加するという新規粒子の開発により、流動層技術の革新を目指しております。
(2)ガス化炉の出口のタールを押さえる、なるべく低減するということが、全体システムを構築する上で大変重要な、一番重要なところであろうと考えて、このプロジェクトを進めております。
(3)触媒の選択の時に、ルテニウムとか・・・・ほとんど実用化の可能性はむずかしい。・・・コバルトを入れたときに、廃触媒の処理をどうするか・・・・カルシウムとかドロマイトとか使い捨てしてもいいようなものはいいと思う。」
という発言がされています。

参考資料 
NEDO技術評価委員会第2回「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」評価分科会の議事要旨
(22)http://www.nedo.go.jp/iinkai/hyoka/bunkakai/15h/1/2/gijiyoushi.pdf

4−5.ドロマイト利用の可能性
 海外の多くの文献によれば、タール分解触媒としてのドロマイトの存在は周知であるが、国内では、プラントメーカーが開発主体と成ることもあって、高価な触媒による方法がよいとされている傾向が見られます。また、ドロマイトという名称の認知度が石灰石に比較して、格段に低いことから、国内ではドロマイトの供給ができないと考えている研究者もいるようです。
 このタール問題の解決がバイオマス利用技術のキーとなることは、経済産業省も認めているところであり、今後、ドロマイトのこの分野での認知を深めていくことが必要になると思われます。
 バイオマス技術が確立できれば、バイオマス原料を容易に集めることが可能である発展途上国とのCDM協力も可能になり、炭素排出権を獲得できることになります。これは、鉄鋼業界等の炭素源大量消費の業界にとっては、興味のある事業になると考えられますし、鉄鋼メーカーと繋がりが強いプラントメーカーと協力することも、この分野での、ドロマイト利用拡大に寄与できると思われます。


5.ドロマイトの新規分野へのアプリケーシンに関しての調査結果
ー水処理関連

前回、平成16年7月29日付けの報告書提出後、アプローチした概要、及び、ドロマイトの特殊性が生かせる新規分野についての調査した結果を以下に示す。

5−1.ヒヤリング結果

1−1.平成16年9月28日 
G 大学 

(1)ドロマイトという鉱石についての認知度は極めて低い。
(2)ドロマイトによるタール分解の理論的裏づけが知りたい。
(3)10月19日美山鉱山見学を実施。守富先生、学生3名、バブコック日立社1名参加。
(4)見学に随行したバブコック日立社坂田主任よりドロマイトのサンプル送付の依頼があり、0−3mmと0−5mm各2Kgを送付した。流動層向けに石灰石との比較を検討したいとの事。

1−2.平成16年10月19日
滋賀県 関係部門にてヒヤリング

(1)県には、技術的知見はほとんどない。
(2)県は、一般からの共同事業としての技術提案を募集している。

  滋賀県 琵琶湖環境部 下水道計画課・下水道建設課 
  http://www.pref.shiga.jp/d/gesuido/index.html
のなかで、「琵琶湖流域下水道フィールド提供型共同研究実施について」として、募集。

  新規技術の評価方法は、県がフィールドを提供し、資金は一般の負担。知的財産権は共有。
  琵琶湖の底質改善には未だ決定打がなく、県としては、大学及び企業からの技術提案を募集して、評価し実施したい模様。しかし、実際には評価できる知見が乏しく、技術提案する企業が、大学の先生等による「評価」による「お墨付」を持参することに期待している。
  
(3)脱Pも大事であるが、脱臭も課題となっている。


5−2−1.タール関連
2−1−1.過去のドロマイトの発電所施設からの引き合い。
流動層発電設備からの引き合いが2件あった。
平成9年:九州電力 苅田 石川島製流動層発電設備向け
      美山鉱山より砕砂2000tを送付、九州にて2−0.5mmに篩い分け
平成13年:北海道電力 NKK製流動層発電設備 見積依頼あり。見積価格合わず。2−1−3.清掃工場でのタール分解へのドロマイト利用
前回は、バイオマス発電以外、清掃工場、RDF燃焼でのタール分解触媒として活用例。

文献(1)Gasification:An Alternative Process for Energy Recovery and Disposal of Municipal Solid Wastes. Columbia University May 2002
http://www.seas.columbia.edu/earth/kleinthesis.pdf

5−2−2.水処理
ヘドロ状底質対策として、覆砂等による密閉や浚渫などの対処療法ではなく、根本的な底質改善には、流入河川中のリン分除去が不可欠であることは明らかになっている。

文献(2)滋賀県琵琶湖研究所(http://www.lbri.go.jp/default-j.htm)発行の研究誌「オウミア」No.38-2
湖沼の富栄養化とリン、京都大学生態学研究センター 手塚泰彦
http://www.lbri.go.jp/omia/38/38-2.htm

文献(3)同上、No.38-3
下水道におけるリンの除去について
(財)滋賀県下水道公社 中山 繁
http://www.lbri.go.jp/omia/38/38-3.htm

文献(4)同上、No.59-1
新しい底質改善技術の開発
http://www.lbri.go.jp/omia/59/omia59-1.htm

文献(5)同上 No.78
酸素がなくなる湖
http://www.lbri.go.jp/omia/pdfs/omia78.pdf

文献(6)Phosphate Removal, The Eutrophication Problem (富栄養化問題,pHが重要ファクターであることが記されている。)Queen’s University Belfast
http://www.qub.ac.uk/envres/EarthAirWater/phosphate_removal.htm

文献(7)城山産業(株)底質改善剤(海水水酸化マグネシウム底質改善剤)
http://www.shiroyamasangyou.com/teishitsukaizen.htm

文献(8)The use of magnesium hydroxide slurry for biological treatment of municipal and industrial wastewater.
(水酸化マグネシウムを利用した下水及び工業用水の処理)
http://www.magspecialties.com/datasheets/FloMag-MagClr-pdf
/The%20Use%20of%20MgOH2%20Slurry%20for%20Biological%20
Treatment%20of%20Municipal%20&%20Industrial%20Wastewater%20
Systems.pdf

また、ヘドロの分解を促進させるためには、好気性バクテリアを活性化するために、通気性と硫化水素の発生を防ぐために、アルカリ性の維持が不可欠。

5−2−3.アルカリ剤による底質浄化のプロセス概略
以下のとおり。(文献(6)を参考)

生活排水・農薬肥料・魚類等養殖→↓

浮遊プランクトン・リン分及び有機物の排出

湖沼水の富栄養価→赤潮発生

湖底沈積

有機物の腐敗により、酸素が消費され還元状態、
リンや鉄が水中に溶出

ヘドロ化 −−−−−−−−−−−→改善のためにアルカリ剤を添加
↓                        期待される効果:pHの上昇
pHの低下                            ↓         
↓                           好気性細菌の活性化
硫酸還元菌の増殖(嫌気性細菌)              ↓
↓                             硫酸還元菌の抑制
硫化水素等の発生(悪臭)                       ↓
↓                             硫化水素の抑制
底質の悪化                            ↓
                               生物浄化の促進
                                    ↓
                                ヘドロの分解


 本来の自然浄化では、河川への過剰な栄養分(リン等)が必要以上に流入しないので、有機物は、自然に腐敗分解し、湖底にはヘドロ状物質は沈積しない。このことは、一般に、水深の深い場所の法が、水底到達時間が長く、その間に分解が促進されやすいという調査結果からも裏づけられる。

 ところが、現実には人家密集地域の河川において、富栄養化の原因物質が、河川に流入する。湖沼(河口も)では、自然浄化能力を超えて、有機腐敗物質が水底に沈積するため、分解が追いつかずヘドロ状物質の発生となる。一旦このヘドロが発生すると、通気性が悪くなることからも、分解するに要する酸素供給が追いつかず、湖沼底は酸素不足で還元状態となり硫化水素が発生し、悪臭を放ち、悪循環に入る。

 この悪循環をとめるには、「湖沼への富栄養化物質の流入を止める。」以外に根本的解決法はない。また、既に悪循環に入っている湖沼への対処療法は、「アルカリ剤を添加し、好気性細菌の活性化を図ると同時に、できれば、湖沼底へ酸素が入りやすい状態にすることが望ましい。」
 
アルカリ剤の実施例
 アルカリ剤の投入として、既に実用化されているものはあるが、いまだ決定打はないようである。  三重県英虞湾では、牡蠣養殖場において生石灰が海中に沈積している腐敗物質に対して、投入されたことがあるが、生石灰が投入後、海水流に流されることは自明であり、長期的な効果は期待できない。
 また、海水より生成された水酸化マグネシウムを、河口や湖沼向けに投入すべく開発した商品も販売されているが、大きな成果は聞かれない。

 理想的なアルカリ剤とは、
(1)急激にpHを上げることなく、アルカリ雰囲気を長期にわたり水中で維持できること。
(2)湖沼底へ確実に留まるような固体状であること。
(3)湖沼低への酸素の流入を妨げるような微粉状でないこと。
(4)対人、対自然に無害なものであること。
(5)既に流入しているリンを固定化させ溶出させないもの。
(6)安価であること。
が、望ましいと思われる。

5−2−4. ドロマイト系資材の適用期待
 上記条件を満たすか否かは、実際にフィールドでの効果確認が不可欠であるが、期待できると推察される資材としては、
(1)半焼成ドロマイト(MgO・CaCO3)
 生石灰で効果があるのは、判明しているが、水中で長期効果持続ができない事が、欠点となっている。焼成ドロマイトでは、やはり生石灰と同様である。しかし、この半焼成ドロマイトは、焼成において、ドロマイト中のMgCO3分のみMgO化したもので、ドイツではDIN規格に基づき生産され、上水道等での水質調整にフィルター材として利用されている。この半焼性ドロマイトは、水中で形状を維持できることもあり、長期にわたりpH調整剤としての機能を発揮できる。
 また、弊社が、試験製造した半焼成ドロマイトと珊瑚礁石灰石を利用した脱リン材を、千葉県土木事務所が実施した長期実証プラント実験で他の資材と比較したところ、好成績を示した経緯もある。残念ながら、脱リン性能より価格面が重視され、採用には至らなかった。
 海外においても、半焼成ドロマイトの適用例が報告されている。
“Phophate Removal From Wastewater by Half Burnt Dolomite”
H.Roques, L.Nugroho-Jeudy and A.Lebugle, Wat.Res.25,959-965,1991

(2)多孔質ドロマイト
 通常のドロマイトでも、ある程度のアルカリ上昇は期待できるが、セブドロマイトのような表面積の大きなドロマイトでは、通常のドロマイトより反応性の高いことが期待される。このことは、過去に実施された通常の石灰石と沖縄珊瑚礁石灰石による脱硫実験結果からも、裏づけられる。
 ただし、湖底への定着性と通気性を良好に確保するため、粉分が少なくなるように粉砕することが必要となると思われる。
 仮にリンをある程度固定化したドロマイトを後日取り出したとしても、法律上はドロマイト原石であるので有機肥料として利用できるはずである。

(3)ブルーサイト
 水酸化マグネシウムは既に、商品としても販売されているが、海水マグからの派生品であり、粒度は細かい。たとえ、造粒していたとしても水中での形状維持には限界があるものと思われる。
 ブルーサイトであるなら、形状維持は自明であり、pH上昇と通気性確保も期待できる。唯一の欠点は価格であるが、難燃剤のように表面処理の必要もなく、既粉砕状態での輸入も可能であろう。
 ブルーサイトも後日、取り出した場合有機肥料として認められるはずである。同じ水酸化物でも消石灰は有機肥料として、認可は受けることができない。
 

6.耐水性モルタル

 国内では、ライム=石灰石という概念が定着し、Mg分は不純分として取り扱われているが、海外ではライム=石灰石及びドロマイトとの取り扱いが一般である。
 特に、建設用モルタルでは、ドロマイトモルタルは、ASTM C207において、Type Sと分類され、耐水性、強度を持ち合わせ、米国の建築関係雑誌では、もし150年前にTypeSが存在していたら、当時の建築者は、疑いの余地なくTypeSを使用していただろうと断言している。
ポルトランドセメントが水硬性セメントであるのに対して、モルタルは気硬性セメントである。最近の土木学会コンクリート委員会でも、ローマ時代の気硬性セメント構造物の保存状態がよいことから、気硬性セメントの耐久性についての注目が高まりつつある。

文献(9)ASTM C207-04
http://www.astm.org
文献(10)Articles:Hydrated lime, Quicklime, Lime putty
Do you know the difference? Are you sure it really matters?
http://www.restorationtrades.com/articles/art30.shtml

米国オハイオのGraymont Dolime Inc.は、HPの中で、Type S モルタル(商品名“Snowdrift, Ivory, Super Limoid S, Mortaseal)の説明の他、さまざまなDolomitic hydrated lime や dolomitic quicklime の利用分野を紹介している。商品名“Kemidol”
文献(11)Graymont Dolime 社 HPより
http://www.graymont-oh.com/

 米国石灰協会(National Lime Association)のBuilding Lime Groupでは、耐水性(水分を透さない)壁材建設用としてのモルタルについて、まとめている。この中のType S モルタルは、石灰モルタルと記述しているが、規格上はドロマイトモルタルである。これは、米国で石灰石の範疇に、高Mg分の石灰石=ドロマイトが含まれているからである。
文献(12)Lime-based mortars create water tight walls
http://www.lime.org/Walls.pdf

7.凍結防止剤(CMA)
 カルシウムマグネシウムアセテート(Calcium Magnesium Acetate=CMA)は、広く利用されている塩化物系凍結防止剤と比較して、環境への悪影響がなく、腐食性のない凍結防止剤として、米国の連邦道路局 (U.S.Federal Highway Administration)に採用され、従来使用されていた塩化ナトリウムに置き換わりつつある。
 このCMAは、ドロマイトに酢酸を反応させることにより製造される。また、CMAを亜硫酸ガスの吸収剤として利用することも提案されている。

文献(13)Ice Melter with CMA againist Chloride Ice Melters.
http//www.actiontree.com/ice_melter.html
文献(14)Production of Calcium Magnesium Acetate from Dilute Aqueous Solutions of Acetic Acid
http://www.iwr.uni-heidelberg.de/~Daniel.Leineweber/mscthesis.html
文献(15)Calcined calcium magnesium acetate as a superior SO2 sorbent.
http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/108066001/ABSTRACT


8.流動層用脱硫資材
 通常の国内石炭火力での脱硫資材には石灰石が広く用いられているが、流動層燃焼方式における脱硫資材としては、「石灰石よりドロマイトが優れている。特に微結晶のドロマイトは、優れた挙動を示す。」との結果が米国イリノイ州で報告されている。
 米国文献では、脱硫資材には、limestone and dolomiteが使用されているとの記述が多く、ドロマイトも排煙脱硫資材としての選択肢に入っている。発電設備や環境により使い分けが進んでいるもようである。
文献(17)Limestone adn dolomeite Resources for Power Plant sulfur Scrubbing Reported to ICCI
http://pttc.isgs.uiuc.edu/monthly-repts/sep2004/Scrubbing.htm

9.今後の調査対象

 海外の文献には、石灰石と書かれていても、Mg分の多い石灰石として、ドロマイトが含まれていることが多い。limestone=日本での石灰石(Mg分がほとんどない)とは、異なることに注意する必要がある。ライムについても同様で、石灰石起源とドロマイト起源のものがLIMEで表記されている。
 日本は、良質の石灰石に恵まれていることもあり、その中のMg分は不純物とみなされる傾向があり、ドロマイトという炭酸塩鉱物の評価が海外並みにされていないのが実情である。タール分解の触媒として多くの文献に登場しても、資源工学系の研究者以外は、国内にはない鉱物として見なされていたようである。

 焼成ドロマイトの適用例も、鉄鋼向けのみの状況であり、海外のように多方面への応用がされていない。海外では、ライムと言っても石灰石起源に限定して考えていない。用途により、石灰石起源よりもドロマイト起源のものが優れている事例もある。今後、どのようなものが、日本国内で商品化成り得るかが、調査対象となる。
(文責 小松)